君の宝石は絶対に割れない

それでも私は生きていく

相互不理解による別れを鋭利に優しく描いた名曲「NG」の解釈で勝つ

者達、ゆっきゅんの1stアルバム「DIVA YOU」はお聴きになりましたか!?!?


配信リンク
https://linkco.re/Hs9C62AU?lang=ja

CD公式通販
https://instagram.thebase.in/items/60795737

「DIVA YOU」特設サイト
https://diva-you.net/

それぞれ違った良さを持つ名曲揃いのこのアルバムの中でも、今回は特に私の心に刺さって抜けなくなった曲、「NG」について語りたい。

上記の特設サイトで歌詞が読めるので、まずはぜひ曲を聴きながら歌詞を読んでみて欲しい。


「NG」は、相互不理解による優しくて残酷な別れを描いた曲だと筆者は思っている。

何でも分かち合えて分かり合えていたと思っていた大切な人との関係が、実は全然分かり合えてたとかじゃなくて相手から一方的な幻想を投影されていただけだと、あたしだけが先に気付いてしまった。一方的に期待されて一方的に尊敬されて、最初から対等なんかじゃなかった。君と笑い合えても、それは奇跡なんかじゃなく何の変哲もないただの趣味でしかない。

『了解、あたし先行くね』
気付いてしまったから、あたしは先に行かずにはいられない。あたしは同じ場所に留まれない。きらめきを見つけては追いかけずにいられなくて、例え大切な人を置いていくことになるとしても、ものすごい早さで進み続ける。
『「向こう岸で君を待とう」とか先週なら言うんだけど』というスピード感。先週のあたしと今のあたしはもう違う人間なのだ。
変わってしまったと君は嘆くかもしれない、でもそれは『変わったんじゃない 無視するのやめただけ』で、君と『同じ夜を泳げている気がしたの』は、「気がした」だけだった。すれ違ったんじゃない、最初から噛み合っていなかった。

多分この曲のあたしは、今までもたくさんの人を置いていった。人間関係の別れの曲は数多くあれど、「NG」は「置いていく側」の心情を歌った曲であることが何より特筆すべきところだと思う。大切な人に置いていかれる悲しみではなく、大切な人を置いていく悲しみ。それはある種の天才が持つ孤独でもあり、とても優しくて、とても傲慢だ。

『こんな似てる君が他人って嬉しい』と、あたしはこんな似てる君と同質化するのではなく、異なる存在として一人きりで成長することを選ぶ。
それでもあたしは君が大切だから、『一生の思い出あげるわ この海で』と、最後まで君にとってのきれいな幻想を与え続けようとする。

この曲の歌い出しは
『了解、君は悪くない』
別れを告げる大切な人にまずかける言葉がそれだということに、優しさと残酷さを感じる。
「君のせいだ」と詰って別れられたら、君もあたしも楽だったはずだ。憎しみは悲しみや痛みを覆い隠してくれるから。なのにあたしがそうしなかったのは、本当に「君は悪くない」からなんだろうと思う。
この「君は悪くない」の中には、一緒に歩幅を合わせられない自分への一抹の罪悪感がある気がする。君は悪くない、けれどあたしは自分を曲げられない。果てない海に飛び込んでも、あたしの『意志は溶けない氷』。止まれない、どうしてもあの果てに行かなきゃいけない。前向きでもあり、やるせなくもある。

そしてあたしと君の別れは、この歌詞で終わる。
『ごめん 会えてよかったよ』
ゆっきゅんの美しい声のフェイクがアウトロに響き渡り、別れの余韻がじんわりと広がっていく。

こんなに鋭利な歌詞なのに、曲調は軽やかで踊るようで、その明るさがどこか寂寞とした空気を感じさせる。朝焼けの白い空、浜辺に君を置いて、あたしは透明な海の中を掻き分けて向こう岸へ進んでいく。
筆者には「NG」を聞くとそんな風景が見えて、近い将来訪れるであろう友人との別れを予感して切なくなる。そんな前向きな切なさに寄り添ってくれる曲だった。

イントロの一番最初、合間にすごく小さな音で「ah ah」「uh ah」とゆっきゅんの吐息が入ってると思うんだけど、その中に吐息で「OK」と聞こえる箇所がある。空耳歌詞かもしれないが、イントロの吐息に「OK」を忍ばせて、歌い出しが「了解」で、曲のタイトルが「NG」。

解釈の余地はまだまだ終わらない。